サーシャ達の憩いの場であるスケートリンクの閉鎖問題も絡んで、ますますプレッシャーは高まっていきます。
しかもリアに直接宣戦布告までしてしまい、フィギュアスケート界に震撼をもたらします。
だがその行為は迂闊にもリアの逆鱗に触れてしまい、普段の彼女からは感じられない冷酷な敵意を注ぎ込まれ、タズサは戦慄を覚えます。
かつてリアの私邸で過ごした甘やかな記憶も全て崩れ去り、タズサは五輪までずっと恐怖を引きずることに。
ショートプログラム前夜に至っては、極度の緊張から眠ることすら出来ない始末。
それでもタズサ自身のピーク・エクスペリエンスにより、奇跡的にリアに肉迫。
翌日のフリープログラムの出来によっては、勝てるかもしれないとタズサは意気込みます。
しかしその考えが如何に無謀だったかということを翌日に思い知らされることに。
よりにもよって己の演技の直前に、女帝リアの完全無欠な演技と、自分に向けられた圧倒的なオーラに打ちのめされてしまったのです。
当然直後の演技ではミスの連発。
2位だった順位は13位まで転落し、ショックのあまりにタズサの精神は崩壊してしまいます。
ロシアに戻った後も立ち直れず、心無いマスコミの取材攻勢もあってか、タズサはただ引き篭って泣くばかり。
でもそんなタズサを再び氷上に立たせようとしてくれる人々がいました。
己の誇りを取り戻す為の再戦をすべく、敢えて挑発をしてきたキャンディ。
リアに意地を見せるべくタズサを利用したと謝りつつ、陰で三代監督に上手く取り次いでくれていたマイヤ。
タズサが滑れなくなっても、ずっと側にいて励ましてくれたサーシャ。
三者三様の思いに触れ、タズサは間近に迫っていた世界選手権に参戦することを決意します。
五輪で有終の美を飾ったドミニクこそ出場しなかったものの、ガブリー・ステイシー・至藤・キャンデイなど強豪がひしめき合い、何より女帝リアまで参戦しているという豪華さ。
リアは五輪優勝という最高の形で、女子シングルを終えようという考えなど毛頭無い模様。
そしてショートプログラム当日。
リアへのトラウマと練習不足から思う様に滑れないタズサですが、マイヤの的確な指示により少ない点差でリアに追随することに成功。
奇しくも五輪と同じ展開で迎えるフリープログラム。
最終決戦、勝利の女神は誰に微笑むのか――。
といった概要です。
万感の思いで読んだ桜野タズサという少女の物語の結末。
今まで彼女が辿ってきた道程の集大成足り得る素晴らしい出来でした。
1度徹底的に地獄の底へと突き落とされたタズサが色々な人の助力を得て、再び氷上の舞台へと這い上がっていく演出にはまさに圧巻の一言。
デビュー時と同様に、2冊構成で紡ぎ出された重厚なドラマの描写に感服しました。
またライバル達の活躍にも目を見張るものがありました。
ケガと闘いながらも、己の持て得る力を全て出し切ったガブリー。
タズサとの確執を完全に押さえ込み、純粋に高みを目指した演技をしきったドミニク。
年齢による陰りを全く感じさせない、力強い大技を見せたステイシー。
悲願の五輪出場を果たし、世界選手権共々個性的なプログラムで観客と一体化した至藤。
マイヤの助言を的確に吸収し、プログラム全体の昇華に成功したキャンディ。
命懸けで立ち向かってきたタズサを完膚なきまでに叩きのめしたリア。
どのキャラの演技も、今までで最も輝いていたと言えましょう。
特に最終巻の口絵にもなったリアのフリープログラムは強く心に残りましたよ。
ただもう1つの関心事である恋愛ネタについては些か心残りがありました。
ピートが再登場しないのは仕方無いにしても、サーシャともう少し進展があっても良かったのではないかと。
ホストネタが多かったのは男版光源氏計画ENDかと考えていたのですが……。
あとターニャへのフォローもすべきだと思いました。
あれっきりで終わらせるのは、あまりにもかわいそうです。
またガブリーとの百合ENDというわけでもなく、見事に完結したスケート部分とは対照的に、未消化の部分が多かった印象を覚えました。
是非とも短編集での補完を希望したいところです。


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